へー、ほんと? 第二十五話

 二十四話からの続きです。 

元看護兵でDJの若いアメリカ人の男と韓国人女性の夫婦との

交流のお話しです。二人は男が韓国に駐留していた時に知り合い、

結婚して米国に来ました。コロラド州デンバー市に陸軍の基地が

あり、男はそこに勤務していましたが、人員整理があり、職を

失い、DJというアルバイトをしていました。女性は25才で

韓国バー・レストランで働いていました。彼女の収入のほうが

多く、自宅のオーデイオ・セットも彼女が買ってあげたとの

ことでした。

 

 そこに日本人商社マンの彼が現れ、彼女のいるレストランに

頻繁に訪れ、二人は親しくなります。 彼女の同国人の友達が

やはり米国軍人と結婚し、小さい子供が二人いて、幸福な

生活をしており、彼女に頼まれて彼の車で友達一家に会いに

行ったこともあります。又、夫婦を日本レストランに連れて行き、

天ぷらやすき焼きをご馳走したこともあります。

 

 ところが、彼女から夫と別れて自分のアパートを借りるという

話を聞かされます。理由は夫からDVを受け、警官を呼び留置所に

入れて貰ったことがあり、弁護士を頼んで離婚協議に入ったからだ

と分かります。 その弁護士はコロラド大学出身で、彼女の働く

店が開業の時、リッカ―・ライセンス取得で面倒をみた関係で

彼女の離婚相談にのっているのでした。その弁護士は妻と別居中

とかで、彼女を自宅に連れて行ったこともあったそうです。

彼女に頼まれて、その弁護士の事務所に彼女を車で連れて行った

こともありました。女性事務員を二人おいていて、繁盛している

ようでした。彼女はその弁護士の前では小さくなって、頼りに

しているようでした。

 

 アパートに引っ越したので、部屋に行ってみると家具が殆ど

なく、直ぐに家具屋に連れて行き、必要最低限の家具を購入。

支払いはローンとし、1回目は彼が払ってあげました。それと

アパートの1回目の家賃もお祝いだと云って小切手を渡します。

彼女は大きいウオーターベッドを持っていて、バスルームで

水を注入するので、手伝ってと云われ、手を貸します。

 

 彼女を店が終わった後アパートまで送り、部屋に上がって

飲んで、泊ったこともありましたが、彼はベッドではなく、

カーペットの上に寝ました。彼は好意は持っていたが、

離婚協議中だから、それ以上には進めず、彼女も頼りには

しても、それ以上の気持ちは無かったでしょう。

 

 そのうち、彼に帰国命令が来ますが、用事があって車で

ニュージャージー州の米国本社に向かいます。

バックミラーに映ったロッキーの山なみと空を見て、

何とも言えない感動を覚えたとのことです。

(写真はネットからの借り物)

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へー、ほんと? 第二十四話

 アメリカ西部劇を好きな人って最近は少ないでしょうね。

これは、現代版「シェーン」みたいなお話しです。

 

 彼は49才の日本の商社マン。 普通なら部長職で、更に、

重役になるか、関係会社に出向させられるかという年齢。

自分で開発した商権でもあれば、分社化で社長という

可能性もあります。

 

 然し、彼の場合、数年前から新規商売の開発要員で、組織

からは外れていました。 このたびは、電子関係の盲点とも

いえる、コロラド州デンバー市のワンマンオフィスで

新ネタを探すことになります。

 

 勿論、家族は日本に残して単身赴任です。昼間は、新聞記事

から拾ったネタの調査で近隣のベンチャー企業訪問でつぶれます。

朝は自炊、昼は適当に外食ですが、夜も最初はレストランで

食事するだけだったのが、あるとき、バーに入ってみました。

店内は凄く広く、踊ることも出来そうで、音楽が流れていました。

その音楽はガラス張りの小さなボックスで若い男性DJがレコードを

かけていたのでした。 彼が休憩で出て来たのを掴まえ、一緒に

一杯飲まないかと声をかけました。 しばらく飲んだところで、

妻が韓国人で韓国バー・レストランで働いているから、覗いて

みたらどうか、というので、その店の場所を教わって出ます。

そこへ行って彼女にご亭主から紹介されて来たと告げます。

テーブルに一緒に座って、ウイスキーの水割りを作ってくれます。

つまみに焼き魚を取ると、韓国から空輸で取り寄せたものとかで、

大変いい味でした。 奥の方にダンスフロアーがあり、数曲相手を

してくれます。 夫のアメリカ人は元陸軍の看護兵だったが、除隊

してアルバイトにDJをやっており、彼女が養っているようでした。(続)

 

 

 

 

へー、ほんと? 第二十三話

 二十二話の続きです。 説明が遅れましたが、彼が突然一人で

クラブに行き出したのには理由がありました。 

彼は最初は29才でニューヨークに単身赴任、2年で一旦帰国、

36才で二度目のお勤めでした。 

元々筋肉が異常に堅かったのが、いろいろな原因が重なり、

41才で「四十肩」になり、幸い半年で治ったものの、

筋肉への負荷を減らす必要を感じます。

 

 彼の住まいはニューヨーク市のクイーンズ区の中心、ロング

アイランドのジャマイカという地域にありました。

ここは、ジョン・F・ケネデイ空港にも、ラグアーデイア空港にも

近く、会社のオフィスがあるマンハッタンのダウンタウンにも車で

1時間以内と便利なところにありました。

 

 ところが、ニューヨークから南のニュージャージー州にある

営業所に勤務することになります。 彼の住まいからは車で90分

かかります。 常識では、勤務先が変われば、近くに転居する

のですが、子供達の学校の都合で転居しなかったのです。

 

 この車の通勤が筋肉に負担になる筈で、その解消のために、

帰宅途中、時々は、マンハッタンで休憩することにしたのです。

そして、馴染みになった女の子のいるクラブに週に1~2回

立ち寄ることになったのです。

 

 韓国人は日本人よりおおらかで積極性があるのですが、この

彼女も最初すごく暗かったのが、何回も会ううちに、どんどん

打ち解けてきて、理由を話してくれました。 彼女は結婚して

数年経っても子供が出来なかったのですが、夫は外に若い女が

出来、妊娠したので、別れてくれと云い、子供が出来ない

自分が身を引くしかないと、離婚に応じたそうです。

 

 然し、怒りと絶望感で睡眠薬自殺を図ります。ところが、

量が多過ぎたのか、苦しみで床を転げまわりながら吐いて、

未遂に終わります。そのときの、寒さと苦しみと恐怖は二度と

繰り返す気が起きない程だったそうです。

 

 その告白からあとは、完全に立ち直り、彼との仲も深まり、

友達のアパートに一緒に行くと、ボーイフレンドだと紹介する

ようになります。お互いの知っているレストランで食事をしたり、

彼女がオーナーを知っている他のクラブにも一緒に顔をだします。

 

 ところが、彼女の態度が冷淡になってきて、どうしたのかと

聞くと、みんなに結婚している人と付き合ってどうするのと

云われたとしょんぼりしています。 これには、答えようもなく、

ついに、あるとき、突然電話が通じなくなり、アパートのドアを

叩いても返事がありません。 LOVE IS OVER でした。

然し、彼女が苦境を乗り越えるのに手を貸せたという満足感が

残り、何も言わずに姿を隠したのも彼女の思いやりと受け止めた

そうです。

 

へー、ほんと? 第二十二話

 ネタもとの彼が自分の小説だかエッセイに使おうと

していたとかで、出し渋っていた話ですが、肝心の

ところはぼかす条件で教えてくれました。

 

 40年位昔のことだそうです。 ある、偶々、目についた

クラブに一人でふらりと入ります。 テーブルに付くと、

若そうだが、服装も顔つきも陰気な女の子が席につきます。

彼の方は初めてだから仕方ないかと、ブランデーの味を楽しむ

ことに専念します。 彼女はほとんど口を開かず、彼は一生懸命

飲み物を勧めます。 結構アルコールは強く、数杯飲むと

ようやく年齢を教えてくれます。 老けて見えたが、25才

とのこと。 ところで、順序が逆になりましたが、場所は、

ニューヨークのマンハッタンのミッドタウンです。

そして、コリアン・クラブであります。二階で、結構テーブル

が多いのですが、客は他に全くいません。 しかし、時間が

経つと若干客が入り、そのうちに、3人のバンドマンが入って

来て、カラオケの伴奏を始めます。 そうすると、彼女は

アルコールが入ったせいもあって、すっかり陽気になって

ステージにあがり、ハングルの演歌をご機嫌で歌い出します。

ところが、これが上手で聞きほれます。更に「踊りましょう」

と云って、手を引っ張ってステージの前のフロアーに行って

日本の演歌の伴奏で踊ります。あとは、フルーツの大盛りが

出て来て、ようやく、クラブに遊びに行った気分になります。

又、忘れましたが、彼女は日本語は出来ませんが、英語がある

程度出来、更に、漢字で筆談して充分意思の疎通は出来ました。

勘定は日本のバーより安く、又、来るよと云って帰ります。(続)

 

へー、ほんと? 第二十一話

 彼は初めてニューヨークに単身赴任したとき、

若いハワイ生まれの中国系アメリカ人の男子大学生と、

同じく若いインドからの男性技術研修生と一軒家の

二階に、部屋は別々ですが、キッチン・トイレを

シェアして、共同生活したことがありました。 

 中国人の大学生は昼間働き、夜、学校に通っていました。

いよいよ、卒業の時期となり卒業論文を提出することに

なりました。 ところが、大学生はタイプが上手に打て

ないのです。 他方、彼はタイプが得意なので、大学生の

原稿を預かり、清書してあげました。 

大学生は無事卒業して、下宿から出て行きました。 

 インド人のほうは、毎日出勤ではなく、部屋にいる

ことが多く、よくベッドに寝ていました。 

一度、カレーを作ったから一緒にと云われて、口に

入れたら香りが強いのと、辛いのとで食べられません。

一度で懲りてしまったそうです。 

 ある時、インド舞踊団が来ていて、某大学の講堂で

舞台があるから、一緒に観に行かないかと誘われて、

見に行ったそうです。 初めての体験であり

その後もチャンスは無く、良い思い出を貰ったと

有難く感じたそうです。

 ダンスといえば、フラメンコもニューヨークで

初めて見たそうです。 先輩がショーをやっている

レストランに連れて行ってくれたのです。

 あとで知ることになりますが、フラメンコは

スペインでもほとんど見ることがないそうで、

彼はアルゼンチンでもう一度見るという幸運に

恵まれます。

 次は、大学のキャンパスの話です。 

彼は家族とボストン近郊のハーバード大学とMIT=

マサチューセッツ工科大学のキャンパスに行った

ことがあります。 

 日本でも本郷にある東京大学のキャンパスには

一人でも行ったし、彼女と散歩に行ったこともあり、

米国に行った以上ハーバード大学のキャンパスは

見ておこうと決めており、そのあと、港のピア4にある

突堤の先にある有名レストランでロブスターを食べて

きたのだそうです。

 ニューヨークには陸軍士官学校がありますが、この

資料館にも行って来ました。 そして、コロラド州

デンバー市に駐在した時は、ボールダーのコロラド大学と

コロラドスプリングスの空軍士官学校のキャンパスも

覗いて来たとのことです。

 アメリカは観るところが限られていることもあり、

普通の男性には大学巡りも観光になります。

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観て来たインド舞踊はもっと古典的で、中国の

京劇みたいなものでしたが、適当な写真がなく、

ネットから現代的なものですが、借りてきました。

 

えー! ほんと? 第二十話

 昔、ある男から聞いたお話しです。

 

 彼は米国駐在の身でしたが、時々日本に出張で

帰国しました。定宿は都内某所の某ホテルです。 

ある夜、知人と会食後独りホテルに戻りましたが、

寝るには早いので、酒の飲めるラウンジに行きます。

女性のピアニストがBGMのような曲を静かに演奏

していました。彼のテーブルはピアノから遠くは

ありません。しばらく、演奏を聴いているうちに、

ふと、思いついて、ウェーターにピアニストに飲み物を

差し上げたいが、テーブルに来てくれるか、聞いてみて

くれないかと頼むと、演奏を終えたところで、彼女が

自然な雰囲気でテーブルに寄って来ます。ウェーターが

椅子を引いて腰掛けさせます。そして、彼女は飲み物を

注文しました。

 

 彼は感激して、久しぶりに日本に一時帰国し、日本女性

が懐かしいのでと説明すると、彼女は住まいが鎌倉で、

終電で帰ると云います。彼は、ハワイの免税店で買って

きた香水がポケットに入っていたのを思い出し、失礼

だけど記念に貰ってくれないかと訊くと、彼女は喜んで

と受け取ってくれたそうです。

 

 アルコールの力を借りて、しらふでは出来ない

ことをしたり、話をしたりしたり出来たわけです。

ただ、さすがに、バーやクラブのホステスと勝手が違い、

彼の方は少しおどおどした話し方をしていたようだ

ったが、彼女は全く嫌なそぶりを見せず、普通に話し

てくれて、意外なことばかりだったと回想していました。

 

 ピアニストというと、芸術家特有の気難しさを予想

したのが、微笑むようなことは無かったが、自然な

会話を出来たのが、最高のお土産になったと彼は喜んで

いました。

 

ウソー!ホント? 第十九話

 今度はカナダのお話しです。 アメリカは良く知られて

いますが、カナダのことは、あまり、知られていないと

思います。特に、今回お話しするノバスコシア(Nova Scotia)

を知っている人は少ないでしょう。

 

 彼はニューヨーク駐在の日本人商社マンで、ステンレス

鋼材の輸入販売をしていました。あるとき、海上貨物の保険

会社からの情報で、カナダのノバスコシアのハリファックス

に寄港している貨物船から、航行中暴風雨で海水をかぶり、

錆びてしまったステンレス厚板を引き取り、買い手を探して

いるとのこと。

 地図で場所を見てください。大西洋岸の赤い島です。

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 買い取って加工すれば売れると読んで、米国人スタッフと

現場に飛びました。商談は即決で決まりましたが、手配に

時間がかかるので、岸壁に近いホテルに宿泊しました。

 

 夜、ベッドに入っても眠れず、思いついてホテルの電話

交換手に電話して、少し、近所の事を教えて貰いました。

それから、しばらくは眠ろうとしますが、眠れません。

もう一度、交換手に電話して、勤務は何時までか聞くと、

夜中の12時までで、もうすぐだと云います。そこで、

ホテルの外に一緒に行かないかと誘うと、OKとのこと。

ホテルは古城のように黒々と聳え立ち、玄関は地上から

かなり高い所にありました。一寸待ちましたが、彼女は

出て来ません。ところが、玄関より大分下のほうで、

ホテルの端のほうから歩み出て来る人影が見えました。

見ていると、姿が消えていました。

 

 電話での約束は何だったのか、疑問だけが残りましたが

夜霧で視界がぼやけていて、ロマンチックな思い出でした。