この世の華(2)

 三番目は情熱の国スペインのマドリッドで逢ったフランスの女性。 

彼女のスペイン語が流暢なので、スペイン人と思ってたら、フランス北部の

村から、列車で出稼ぎに来ていて、月曜日に来て、金曜日に帰るとのこと。 

22才で、女の子の赤ん坊が二人いるが、母親に預けて来ているのだと。 

夫とは離婚したとのこと。

 会ったのは、支店長の案内で行った小さな薄暗いバー。 お雛様の雛壇の

ように、3~4段の段々に女の子が座っていて、上からお客を見下ろしている。 

客はアルコールを飲みながら、煙草を吸いながら、下から見上げて、女の子の

品定めをしている。 気に入った子が居れば、合図をして一緒に外へ出て行く。 

 上に説明したフランス女性は、日本から来た社員に大好評だからと、

勧められて、ホテルへ向かってブラブラ歩きながら、身の上話を聞いた。 

私の第二外国語スペイン語だったのが役に立った。

 身体がマシュマロのように柔らかく、身体のどこを触っても、すぐ骨に届いて

しまい男の心を溶かしてしまう。 離れ難くて、時間を延長してもらった。 

彼女はたっぷり稼げて、ご機嫌で鼻歌を歌いながら、バーに戻っていった。

 四番目はドイツのハンブルグという、恐らく欧州、あるいは、世界一の夜の

歓楽街。新宿の歌舞伎町など田舎っぽいと感じさせるような、ドッキリ

させられた街でのこと。

 最初は、大劇場に入り、そこは客席から舞台を見下ろす、普通の劇場スタイル。

ただ、客席といっても、膝の前にミニテーブルがあり、酒、たばこ、つまみを

楽しみながら、ショーを観るのである。 出し物はズバリ、アダルト・ビデオの

生のショーである。 ただ、距離が遠く、迫力はいまひとつだった。 

ベッドが2組置いてあり、2組の男女がベッドの上で、本気のプレーをやって

見せる。 最後はチャンとお腹の上に出して見せる。 ただ、何故か、ほかに

2組の男女が舞台の上に居り、何のためなのか分からなかったが、今になって、

前の組がうまくいかない場合に備えていたのではないかと思い至った。 

なにせ、ドイツ人のやることだから、「完璧」でなければならない。

 前座が長くなったが、これからが本番である。 舗道を歩いていて、

つと、扉を開けて中に入る。 中は駐車場のような感じだが、弱い蛍光燈

のみで薄暗い。 

 天井は或る程度の高さがあった。 少し、中に進むと、若くてスラリ

とした、白人女性が一糸纏わず、ハイヒールだけ履いて近寄って来る。 

周りを見回す余裕は無く、適当に選んで2階に連れて行かれる。 

個室に入って、条件の交渉である。 50マルクでは見るだけで、

100マルクだと身体に触らせるという。 100マルクでも全く高くないし、

交渉成立。 色が白いのは当然として、やはり、肌のなめらかさは素晴らし

かった。

 小説の世界では、全裸の仮面舞踏会とかスワッピング・パーティーとかが

出て来るが現実にただの観光客に手軽に興奮と満足を与えるのは、流石に

官能先進国と感心した。(つづく)