ゴルフボールへの思い(4)

                (七番ホール)
 次の月はハンデが9だから上位入賞は無理とは思ったが、スコアは80割れを狙っていた。 ところが、突然、左肩に痛みが走り、ウッドが振れず、3番アイアンで超スローなスイングでテイーショット、ロングホールは3番アイアン、3番アイアン、9番アイアンと繋いで、3オンのバーディー・チャンス。 バーディー フィニッシュ。 そんなゴルフで何とか90越えで廻れた。
                (八番ホール)
 痛みは左肩から右肩に移り、タイプを打っても、ペンを持っても、腱鞘炎で肘から先が痛み、更に、上着を着るときは右肩の付け根の内側が痛くて、腕が上がらない。 痛みが首筋、背中と右半身全体に広がり、訳が分からず、日本人の医者に駆け込んだが、内科医であり、とりあえず、痛みを取ろうと、首から血を抜いた。 痺れて痛みは一時的に消えたが、帰宅したらまた再発。 アメリカ人の同僚がカイロプラクター(骨矯正療法士)に連れて行ってくれた。 いくらかは収まったが、痛みは消えなかった。
 ニューヨークに日本語放送のテレビ・チャンネルがあり、中国系のアメリカ人鍼灸師のコマーシャルが流れた。 藁にも縋る思いで訪ねたら、京都で鍼をならったとかで、日本語も流暢で、奥さんや可愛い女の子二人も日本語を使っていた。(奥さんは日本人か) 痛いのではないかとか、本当に治るのかと、不安と疑問で一杯だったが、先生の説明を聞いて、取り敢えず治療に専念することに。 毎週、土曜日に通い、半年したころ、二の腕の付け根の痛みはまだ取れない。 ところが、数日後、突然、腕が軽くなって、痛みも無く、ケロッと治ってしまった。 先生から、半年から長いと2年かかると聞いていたが、最短で治ったのである。 治療は頭のてっぺんから、足の小指まで、身体の裏と表と全身に鍼をたてることを繰り返した。 せんせいも一生懸命に治療をしてくれた。 アメリカの大学から博士号を出すから論文を提出してはどうかと誘われ、鍼灸胃潰瘍に対する効果を書いていると言っていた。 奇跡的な回復も有難かったが、費用も会社が保険で全額負担してくれた。
                 (九番ホール)
 右肩の痛みは「四十肩」という病気と教えられた。 100%完治はしないが90%は直っている筈で、再発はしないと教わった。 ボーリングのボールは持てなかったが、ゴルフは左腕が主軸で右腕は補助だから、何とか再開出来た。 しかし、発病前の様な訳はなく、ゴルフボールへの思いは空の彼方へ飛んで行った。(お客さん、OBですよ!)