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さらばロッキー山脈のやまなみ Part III

詳しい事情は聞かなかったが、以前夫婦喧嘩から暴力沙汰になり

警官を呼んで夫を留置場にぶち込んだことがあったとのこと。

そんな話を聞いたから、夫の働いているクラブに顔を出してみた。

すると、彼は彼女のことを、韓国では誰とでも20ドルで寝る女だったと

酷評していた。 また、彼はまわりの女からも男からも言い寄られて

いると自慢をしていた。

 

それからは、彼女とさらに親しくなり、彼女もなつき、私を親友

夫婦の家に一緒に連れて行ってくれたりした。 その親友も同国人

で米兵と結婚、一戸建て住宅に住み、幼子二人と一家四人で楽しそう

であった。私一人でその家に遊びに行ったことがあったが、話が例の

彼女のことになり、彼女が夫に惚れたのは彼のテクニックが良かった

からだと本人が言っていたと教えてくれた。

 

いよいよ、彼女は新居に引っ越し、私はお祝いとして、最初の家賃を

払ってあげた。 さらに、家具がほとんど無いので、家具屋に連れて

行って、最低限度の家具をローンで購入、これも初回分を払ってあげた。

彼女はウオーターベッドを持っており、バスルームの蛇口にホースを

取り付け、注水するのを手伝ってと云われて、大きい浮袋のような

ベッドを抑えてやった。 それからは、夫婦気取りで彼女の部屋で

過ごす時間を楽しんだ。 

 

あるとき、弁護士に会うので一緒に行ってと言われ、私の車で連れて

行った。 彼はコロラド大学出身で、彼女が働いているレストランが

リッカ―・ライセンスを取る時に世話になったとかで、彼女の多分、

離婚の相談に乗っていたのだと思う。 彼は私と同年位で妻と別居中

とかだった。 彼女は彼の家に連れて行って貰ったが立派な家だったと

言っていた。 なお、リッカ―・ライセンスというのは、レストランや

クラブが酒を売るのには欠かせない許可で、発行済みの数以上には発行

されず、不要になった店のものを買わねばならず、専門の弁護士に頼む

必要があるとのことだった。

 

その後、店に顔を出したとき、その弁護士が入口に近いところでポツンと

飲んでいるのを見かけたが、彼女は彼のテーブルには近づかず、妙な感じ

がした。

 

とにかく、この彼女は平然と男どもの相手をしていて、まったく動揺も

隙も見せない感じで、こちらもある線から先には進めず、ダンスはするが

手も握らず、ましてキスなどする気にもならない、という、このような

付き合い方をしたのは初めてだった。

 

かくして、コロラドの名前の通り、つまり、スペイン語コロラド

「黄金色の」だが、私の短かく空しい、しかし、胸苦しい思い出を

腹の底に抑え込んで、ロッキー山脈を後にしたという結末であった。(了)