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うそー! まさか! 第八話

 昔、むかし、一人の変わった男がいました。

商社マンとして、ニューヨークに2年プラス8年、計10年駐在、

更に、ロッキー山脈の麓にあるコロラド州デンバー市に半年駐在、

帰国の命令が来て日本に帰ることになります。

 

その時、日本はかつてない規模の金融バブルが到来、株式・債券、

ゴルフ会員権、土地の値上がりはすさまじいものでした。

 

 そんな時代が来るとも知らず、数年前に、彼は親から相続した東京

都心の古い木造家屋を鉄骨ヘーベル5階建てに建て替え,ローンの返済に

苦労していたのです。そして、アメリカに10年も住んだので、狭い

日本ではなくアメリカで何か商売をしようと考えていました。

 

 だから、帰国するときは、所有していたビルを売却し、その資金を

持ってアメリカに戻ろうと考えていました。予想どおり、地上げ屋が声を

掛けてきました。そこで、会社勤めをしていては、交渉に腰が入らないと、

25年しか勤めてない会社を退社して売却交渉に臨んだのです。 

 

 交渉は満足のいく条件で成功、資金も準備出来たので、アメリカに

事前の調査に行こうと、旅行代理店経由、米国領事館にツーリストビザ

(観光ビザ)を申請します。旅行代理店はハワイ行きのツアーのメンバー

としてビザを申請したが、何かの手違いで出発日が過ぎているツアー

だったことが領事館の担当者に見つかり、代理店と一緒に本人も呼び

出されます。そして、何と、全世界の米国領事館に「要注意人物」

として連絡、つまり、「ブラックリスト」に載せると言い渡されます。

 

 こうなっては、代理店もどうすることも出来ず、ビザの申請を諦め

ようとします。然し、一人、同じく会社をやめて、中小企業の社長と

合弁で会社を立ち上げた男がおり、その会社の米国派遣員というビザ

なら取れるから、同社に来ないかと誘われます。

 

 ところが、ここで、この男は25年勤続、会社から肩たたきにあった

訳でもないのに、自分から勝手に退職するという、尋常ではない決断を

したあとで、再び、とんでもない決断をします。 

 

 米国に戻ってもゼロから事業を始めるので、勝算があった訳ではない。

41才で四十肩という筋肉の故障に見舞われ、90%は快復しているが、

そのままの生活を続けるのが不安でもある。

 

 そこで、リハビリをかねて、温泉別荘地に住居を建て、証券売買を

しながら、念願のゴルフ三昧の生活をしようと決めたのである。

1~2年は値上がりで利益をあげたが、バブルがはじけて相場が

頭打ちとなるや、彼は、潔く手仕舞いし、損は被らない。

これは、商社で外国為替の変動、金・プラチナ価格の変動などで

相場観が出来ていたからである。株取引も若い時から相場とか

チャートとかに接していたし、会社四季報も頻繁に読んでいた。

 

 然し、折角儲けたのに、当時の累進的な「所得税」に利益を

さらわれるのである。国の国債残高の減少には貢献したが。