えー! 本当? 第十四話

 大昔、ある男がおりました。 大学に入るまではガールフレンドも

無く、入学後直ぐに青年向けの雑誌の最後の方の文通希望者欄を見つけ、

文通希望の女の子に片っ端から手紙を書きました。

5人位から返事があり、文通を始めました。 近畿、東北と地方の人

ばかりでした。 短大に合格して上京した人に会いましたが、それっきり

となりました。 他の人達とは文通も続きませんでした。 ところが、

一人、東北の図書館司書をやっている女性が、親切なお寺さんがあり、

無料で泊めてくれるから、夏休みに遊びに来ないかと誘ってくれました。

 

 喜んで東北周遊券を買って、お米をリュックに詰めて出かけました。

そう、まだ、戦後で食糧事情が良くありませんでした。 2週間お寺の

方丈さんご夫婦に親切にして貰い、子供達と毎日リアス式海岸を見て

歩き、美味しいものをご馳走になり、帰りは平泉の中尊寺の光堂を見て

帰京しました。 文通相手の女性も毎日仕事の帰りにお寺に寄って、

食事の後片付けを手伝い、急速に親しくなりました。

 

 然し、帰京後は学業とアルバイトに忙しく、彼女との文通は減って

いきました。一度彼女から東京に出て来たという手紙があったが、

返事を出せませんでした。

 

 そして、大学卒業、就職、2年目の夏、休暇を取って東北旅行を

計画しました。 ところが、彼女との文通は途絶えており、連絡が

つかず、松島から浄土ヶ浜、盛岡経由、十和田湖、青森まで北上、

泊めて貰ったお寺には寄らずに帰ってきました。

 

 50年以上過ぎたが、忘れ得ない夏休みの二週間だったそうです。

(写真は浄土ヶ浜

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