うそ―! まさか! 第十六話
熱烈な純愛物語です。 ある男から耳にした昔の話ですが、彼の知り合いの
中年の教師が突然死しました。 告別式から火葬場に行き、棺桶の蓋を開けて
参列者全員が生花を遺体の上に置きます。 そのあと、棺桶は蓋を閉めて
焼却炉の中に進められる筈でした。 ところが、棺桶の脇に居た中年の女性が
棺桶の上に登ろうとしがみつきます。 あわてて、周りの人たちが彼女を抱き
かかえて下そうとしました。 すると、彼女は「私も一緒に焼いて!!」
と繰り返し叫ぶのでした。
実は、亡くなった教師とこの女性は恋愛関係にあったのだそうです。
彼女は生徒の母親だったのです。
まるで、100年まえの島村抱月と松井須磨子の熱愛みたいです。
松井須磨子は抱月の死後2か月後、後追い自殺を遂げたという、ドラマを
地で行く最後でした。 彼女は33才の若さでした。
その母親がその後どうなったか、誰も語らなかったようです。
故渡辺淳一氏が聞いたらどんな物語に昇華してくれただろうか。