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えー! ほんと? 第二十話

 昔、ある男から聞いたお話しです。

 

 彼は米国駐在の身でしたが、時々日本に出張で

帰国しました。定宿は都内某所の某ホテルです。 

ある夜、知人と会食後独りホテルに戻りましたが、

寝るには早いので、酒の飲めるラウンジに行きます。

女性のピアニストがBGMのような曲を静かに演奏

していました。彼のテーブルはピアノから遠くは

ありません。しばらく、演奏を聴いているうちに、

ふと、思いついて、ウェーターにピアニストに飲み物を

差し上げたいが、テーブルに来てくれるか、聞いてみて

くれないかと頼むと、演奏を終えたところで、彼女が

自然な雰囲気でテーブルに寄って来ます。ウェーターが

椅子を引いて腰掛けさせます。そして、彼女は飲み物を

注文しました。

 

 彼は感激して、久しぶりに日本に一時帰国し、日本女性

が懐かしいのでと説明すると、彼女は住まいが鎌倉で、

終電で帰ると云います。彼は、ハワイの免税店で買って

きた香水がポケットに入っていたのを思い出し、失礼

だけど記念に貰ってくれないかと訊くと、彼女は喜んで

と受け取ってくれたそうです。

 

 アルコールの力を借りて、しらふでは出来ない

ことをしたり、話をしたりしたり出来たわけです。

ただ、さすがに、バーやクラブのホステスと勝手が違い、

彼の方は少しおどおどした話し方をしていたようだ

ったが、彼女は全く嫌なそぶりを見せず、普通に話し

てくれて、意外なことばかりだったと回想していました。

 

 ピアニストというと、芸術家特有の気難しさを予想

したのが、微笑むようなことは無かったが、自然な

会話を出来たのが、最高のお土産になったと彼は喜んで

いました。