パール・バック 「大地」

 昨年のノーベル文学賞は世の中を騒がせた。 ノーベル賞といえば

ヘミングウェイパール・バック川端康成を連想する。

 

 若い時、パール・バックの「大地」を読んだが、中国の百姓夫婦が思わぬ

富を手に入れ、大金持ちになった話くらいの記憶しかなく、何故ノーベル賞

だったのか知りたくなった。文庫版で1~4巻を購入、1巻目は記憶をなぞる

だけだから、一気に読めた。 昔読んだのは、ここまでで、そのあとの話は

未知の領域だった。最初の主人公、王龍は1巻で姿を消し、2巻からは子供

達と孫達の話だが、3~4巻は三男 王虎将軍の長男 王淵が中国の歴史に

翻弄されながら、最後に美齢という理想の女性と結ばれる。

 

 時代は、解説によると、日清戦争義和団の乱孫文辛亥革命清朝

滅亡、国民党と共産党の成立、蒋介石の台頭、南京事件、という激動の近代

中国の歴史の嵐の中で揉まれた一家の物語。 内容は素晴らしいが、翻訳もの

のつねで、読み通すのは難行だった。

 

 「大地」の原題は The Good Earthで、「息子たち」「分裂せる家」と

合わせた3部作の原題 The House of Earthに対し、1938年ノーベル賞

が与えられたらしい。

 

 パール・バックは1892年母親が実家のあるアメリカに帰国して生まれた。

宣教師の夫と結婚。 1931年に「大地」を発表。 1934年離婚、米国

に帰国、二度と中国に戻らなかった。 4人のきょうだいは幼くして中国で

亡くなり、母親も1921年 中国で世を去り、中国の土に眠る。

 

パール・バックは1973年 81才 米国で永眠。 中国の近代史を

「大地」そのものに立脚して細かく描き続けた労に対し、ノーベル賞

ふさわしいと思えた。