うそー、本当?という話はいかが 第一話

 昔、むかし、ある男がおりました。

 彼は体格も良く、顔つきも歌舞伎役者でも勤まりそうな

ごつい男前、声も凛と響く美声の持ち主でした。

 頭脳も優秀で将来は宇宙飛行士になる夢を持っていました。

大学は防衛大学航空学科に合格しました。

 ところが、全寮制で毎日軍隊の様な生活を強いられます。

厳しい教練を2年間は我慢しますが、遂に中退を決意します。

 そして、彼はドイツ語を習得して、将来ドイツで暮らすことに

人生設計を変更しました。

 ここでも彼はいとも簡単に国立の外国語大学のドイツ語科に

合格します。 そして、一年からやりなおし、4年後卒業、合計

6年かけて学業を終了します。

 就職はドイツ駐在が可能な総合商社を受験、勿論採用されます。

仕事は機械部で海外からの輸入、日本からの輸出と十分経験します。

 さて、結婚ですが、これも、信じられないことですが、相手が

高校生の間に婚約していて、彼女が卒業と同時に挙式と素早く

済ませ、即座に1男1女と子供を作るのも抜かりはありません。

 海外駐在は、先ずはニューヨーク、一旦帰国後、念願のドイツ

駐在です。然し、帰国後は営業から外れます。

 商社の営業は若いうちが勝負で、社内で部長、取締役と

のしあがるのは、ほんの一握りで、部長から関連会社に出向、

そこで定年を迎えてお払い箱ということになります。

 ところが、ここでも、彼は部長になるまで待たずに、偶々

会社が繰り上げ退職に対して退職金を上積みすると発表するや

いなや、会社を辞めてドイツの小さなホテルを買い取り、そこの

オーナーに収まってしまいました。 駐在中に前のオーナーと

話が持ち上がり、タイミングを計っていたのです。

 その後、どうなったかは知りません。 ドイツでメッチェンと

仲良くなって目の青い子供でも作っているのではないでしょうか。